プロデューサーKです。

 日本選手権2日目は、ミックスゾーンという選手に話を聞ける通路で、声を拾いました。紙面に載らないような話をボチボチと紹介します。



 為末は、自分でもびっくりするような魂の走りをみせた。4、5月は最悪の状態で、五輪に出られないのではという重圧もあり、眠れない日が続いた。

 「逃げ出すか(競技をやめてしまうか)、このまま続けるかしか選択肢はない」と開き直り、腐らずにトレーニングを積んできたことが、本人もびっくりするような結果を生んだ。

 前日の予選も満足のいくレースではなく、決勝前のウォーミングアップでは、中学生のようにガチガチに緊張していた。

 「30歳にもなるのに何故こんなに緊張するのだろう」。メダルを獲ったエドモントンでも同じような気持ちになった。「きっと何かが起きる」。予感めいたものを感じた。

 そしていつの間にか「2位に入らなければ五輪に出られない」というプレッシャーが消え、無の境地でスタート台に立てた。そしてエンジン全開で序盤からかっ飛ばした。突っ走った。追いすがる成迫を振り切った。

 「自分でもびっくりしている。北京でも奇跡を起こしたい」。北京五輪に陸上人生のすべてをぶつける。